3.請負工事業の決算書・試算表の見方

(1) 未成工事支出金と未成工事受入金
 
この2つの科目が工事業の決算書などを理解しづらくしています。
 
完成していない工事で部分的に発生した原価分が未成工事支出金
                                (仕掛工事)
     ”   で内金として入金した分が未成工事受入金
                          (工事前受金)
 この2つの科目が貸借対照表に計上されていても、この仕掛工事の未収分と未払分が あといくらあるのかが決算書や試算表に表示されていない為、元々これらの表からはこの先の資金繰りは読めません。

(注)修正を加える
 ですから、他の商売の売掛金や買掛金のように、完成工事分と仕掛工事分の未収金と未払金を確認し、合算して資金繰りを読みます。
また同様に、この仕掛工事分の売上と原価がいくらになるかは損益計算書に表示されていませんので、この先の損益も読めません。
 
よってこの不明点を、請負契約書などで受注高や入金予定を確認することとなります。

(2) 資金繰りを見る場合の注意点 B/Sの修正でこの先の資金繰りが読めます。)
 
支払い先行か入金先行か
 

工事前受金 と仕掛工事などの差額で判断します。

 
 工事前受金が仕掛工事より多い場合は入金先行型になりますので、仕掛工事に対する支払い分の運転資金 の不足は無く、資金不足があれば他に原因があります。
 仕掛工事が工事前受金より多い場合は、支払い先行型が多いようです。 尚、仕掛工事には支払いサイトで1〜2ヵ月分の未払金は含まれていますのでその未払金を除いて判断する必要があります。

商業における売掛金と買掛金の感覚を持って〜

 

仕掛工事の未収金 と仕掛工事の未払金の差額を確認します。

   毎月、個々の仕掛工事であといくらの貰い分(売掛金)と支払い分(買掛金)があるのかを確認します。

(3) 損益を見る場合の注意点(P/Lの修正でこの先の損益が読めます。)
 
仕掛工事の請負高を売上計上します。
(尚、仕掛工事で前受金は未収分の入金となります。)
工事未収金/工事収入
(工事前受金/工事未収金)
期末の仕掛工事を無くします。
(期中はその月末)
期末仕掛工事/仕掛工事
仕掛工事の未発生原価を計上します。
(確定できないときは概算で)
工事原価/工事未払金
 尚、これらの工事業や損益の認識は、福岡県久留米市の佐藤幸利先生の公演や著書に基づいております。 (資金別貸借対照表は特許になっています。)
主な著書は 「実践資金管理会計」(葦書房)
  「資金会計の理論と実践」(恵友社)などです。
 
是非、ご参考になされたらと思います。